中国鉄道旅行ガイド

なぜ中国鉄道を使うのか

広大な中国を旅するにあたって、鉄道は交通手段の第一選択と言ってよい。本数が多く、大都市はもちろん中小都市までしっかりカバーしており、都市間移動にうってつけの交通手段である。

中国の鉄道は、国鉄として一体的に運営されているが、近年利便性がいっそう向上しており、ますます多くの利用客を集めている。近年、輸送人数は1年間で40億人を超え、輸送人キロは1兆5000億人キロに達しており(国家鉄路局)、輸送人キロベースでは全交通手段のうち鉄道が最もよくつかわれる交通手段となっている。

空の便に比べて鉄道は時刻に正確なことが売りでありビジネス利用でも鉄道へのシフトが著しい。では高速バスはというと、本数の多さが自慢だったが、高速鉄道開通後は、高速鉄道の運賃が軒並みバスより安かったために、高速鉄道との競争では完敗している。バスの安全性の低さを嫌って、在来の区間でも鉄道を愛用する市民は少なくない。また、長距離移動は居住性の面から鉄道に圧倒的優位性がある。

おすすめ列車

旅行客にお勧めなのは次の類型の列車である。

①電車列車(高鉄・動車)

本数が多くスピードも速いので、都市間移動に最適である。日本よりも運行距離が長いのが特徴で、日帰り圏だけでなく長距離の移動手段でもある。1500kmを超える区間でも1本の電車列車で移動できることが多い。電車列車の時刻は本時刻表において太字で記載している。

②夜行寝台列車

電車列車の乗車時間が6,7時間を超えてくると、夜行列車に乗った方が、時間効率が良いという場合もある。そうした需要から、電車列車が全国に普及した現在でも、中国全土で夜行列車が多数運転されている。中国では日付をまたぐ客車列車はほとんどすべて寝台車を連結しているので、宿代を浮かせつつ日中の時間をフル活用する夜行寝台列車の旅が気軽にできる。

③夜行寝台電車列車

電車列車と夜行寝台列車の各々の利点を掛け合わせた夢のような列車が登場している。在来線夜行列車だと所要時間が12時間を超えてしまい夜発・朝着のダイヤが組めない長距離区間において、寝台を備えた電車列車を走らせることによって夜発・朝着を実現したものである。

2019年1月からは、固定編成の動力集中式電車による新しいタイプの夜行寝台電車列車も運転し始めている。車両形式はCR200Jといい、電車列車の優れた内装と動力集中式の低コストを掛け合わせた列車といえる。最高速度は160km/hで、これは直達特快と同等だが、車両性能が総合的に向上していることを反映して、既存のZ列車より所要時間を短縮している。運賃・料金はZ列車よりやや高めだが、車内設備は従来の客車よりグレードアップしており、快適さが増している。

中国鉄道のしくみ

全国鉄道網は国鉄による一元的運営

中国では、都市鉄道は都市交通ネットワークの一部であり、全国鉄道網=国鉄とは切り離されている。都市鉄道は各都市が運営しており、国鉄と乗り入れることもない。監督官庁も技術基準も異なっており、都市鉄道と国鉄は全く別の乗り物だと考えなければならない。

全国鉄道網の各路線は、基盤施設の建設・保有・運営主体の違いによって、国家鉄路・地方鉄路・合資鉄路に分けられる。それぞれ、国鉄の直轄路線(狭義の国鉄)、地方政府が建設して国鉄に接続させている路線、国鉄と地方政府が合弁して建設した路線を言う。列車は、中国国家鉄路集団有限公司を頂点とする指揮命令系統の中で国鉄の地方本社(局集団有限公司)等により運転されている。運賃は原則として通算し、きっぷも1枚で発売されるため、日本と違い、旅客は路線の帰属や列車の運営主体を意識しなくてよい。本時刻表では、この全国鉄道網を中国国鉄と総称する(広義の国鉄)。本時刻表が収録するのも、この広義の国鉄の時刻である。

列車と路線の類型

日本ではミニ新幹線を除けば在来線と新幹線で列車と路線の類型がきれいに分かれる。それに対し、中国では、従来からある路線と高速新線とで軌間が同じであり、相互の乗り入れが盛んなため、この類型はやや複雑である。

列車は、機関車と客車からなる客車列車と、固定編成の電車による電車列車に分けられる。電車列車はさらに、時速200km以上で走る動力分散型電車と、時速160km以下で走る動力集中型電車とに分かれる。

路線は、次の表のように、大きく3つの類型に大別できる。

最高速度電車列車客車列車貨物列車
動力分散型動力集中型
普速鉄道≦160km/h
快速鉄道160km/h<, ≦250km/h
高速鉄道250km/h<

〇は運転すること、△は特定の路線で少数運転すること、×は運転しないことを示す。

ただし、実のところ、地理環境や輸送需要に合わせて、様々な特徴を持つ路線が建設されているので、上表の範囲に収まらない例外が出現する。最高速度や列車類型から路線の性格を定義することには様々な困難がある。

本時刻表では、路線による分類は混乱を招きがちなのでこれをできるだけ避け、列車に着目して分類するように努めている。以後、原則として客車列車と電車列車に大別して案内することとする。

客車列車は長距離中心

客車列車のダイヤは長距離中心である。短距離輸送や都市内輸送は道路交通や都市鉄道に移譲している。停車駅が少ないこともあって速度は速く、表定速度は遅い列車でも60km/hを上回ることが普通で、花形列車では120km/hにも達する。路線や系統ではなく個々の列車が営業の基本単位となっており、なるべく1本の列車で目的地に向かえるように、多種多様な区間・経路の列車が運転されている。高速鉄道・快速鉄道が開通して電車列車の運転が始まった区間でも客車列車が減らされることはあまりなく、他の区間と同様に速達列車や長距離列車が運転されており、選択肢の幅を広げている。短中距離の輸送はダイヤ設定上あまり考慮されていないとはいえ、幹線では運転本数が多いので、結果的に近隣都市間の利用にも十分対応できる本数が確保されている場合が多い。さらに、近年は線路容量や車両数に余裕が出てきたため、それを生かして短距離列車も増発されてきている。

夜行列車が多いので幹線では24時間営業の駅が多く、各路線では保守間合いが朝方に取ってあることも多い。このため列車の運転時間帯に偏りが生じることがあり、短距離利用でもあらかじめ時刻表を確認しておくことが必須である。

電車列車は速度と本数が自慢

電車列車は、その仕組み自体の速さだけでなく、新しく開通した高速鉄道・快速鉄道そのものが既存路線よりも大幅なショートカットを実現している例が多い。そのため、特に山間部において客車列車の1/3以下の所要時間で済むような圧倒的な時間短縮を実現しており、速さが一番の自慢である。車両の回転が速いこともあり、本数も客車列車よりかなり多く設定してあることが特徴で、短中距離では時刻表をあらかじめ確認しなくても利用できる高密度ダイヤを実現している区間が多い。

日本と異なるのは、列車間の停車駅の多寡による役割分担があまり行われていないことである。途中の小駅の停車はランダムであり、小駅どうしの移動はあまり便利でないことが多い。また、客車列車の長距離重視の思想は電車列車にも導入されており、多種多様な区間・経路の列車が運転されている。これは、乗車時間4時間を超えるような距離帯でもなお電車列車が空の便よりも選好されるという市場環境が影響している。日本列島縦断を超えるような長さを運転する列車も多数設定されている。

運賃・料金のしくみ

2007年に運転を開始した電車列車は新しい運賃のしくみを導入しているが、それ以前から走っている客車列車に関しては、いまなお、対キロ制の運賃・料金を必要に応じて積み立てる方式をとっており、日本の運賃制度とよく似ている。

たとえば客車列車で新空調の普快の硬臥に乗車する場合は、硬座運賃、普快料金、硬臥料金、空調料金が必要となり、さらにそれぞれ新空調の割り増し料率をかける、というように計算する。遠距離運賃は6段階にわたって最大50%まで逓減するので、長距離移動が優遇されている。その代わり、短距離は道路交通に移譲する政策をとっていることから、各運賃・料金の起算キロ程が高く、短距離では割高になる。客車列車の運賃・料金は1995年から値上げされておらず、総体的に見れば極めて安価である。

電車列車も、二等座運賃でみると並行する高速バスより安いことが多く、決して高価ではない。ただし、電車列車の運賃は遠距離逓減をほとんどしないので、長距離になると割高感が増し、空の便の割引チケットとあまり変わらなくなることもある。

運賃・料金の一例 北京西~西安(北)を例に
等級値段(元)日本円換算
電車列車ニ等座515.510,310
電車列車一等座824.516,490
客車列車硬座*59.51,190
客車列車硬座快速*83.51,670
客車列車新空調硬座快速148.52,970
客車列車新空調硬座快速臥(寝台)254.55,090
客車列車新空調軟座快速臥(寝台)398.57,970
高速バス大型臥高一級280.05,600
飛行機中国東方航空エコノミー払い戻し不可の一例410.08,200
飛行機中国東方航空エコノミー正規運賃の一例1850.037,000
新幹線東京~博多1175キロのぞみ普通車指定席通常期23,390

キロ程は電車列車1216キロ、客車列車1200キロ(鄭州経由)。*は実際には運転されていない等級だが比較用に示したものである。日本円換算は1元20円で計算。飛行機は北京首都国際機場~西安咸陽国際機場。

列車種別と設備の紹介

種別について

高速動車組列車(高速)(列車番号G)

最高速度300~350km/hで運転される電車列車である。快速鉄道に乗り入れる際はD列車と同じ速度となるが、運転区間のうちどこかで時速300km/hに達するのがD列車との違いである。三角表運賃を施行しており、具体的な運賃は12306サイトで確認してほしい。季節・列車により運賃が変わることがあるが、あくまで事前公示制であり、同じ列車についてきっぷを買う時期によって運賃が変わることは無い。快速鉄道乗り入れ区間においては、同じ区間を走るD列車と一致するように運賃が調整されていることが多い。

動車組列車(動車)(列車番号D)

最高速度160~250km/hで運転される電車列車である。接客設備はG列車と大きく変わらない。快速鉄道で主に運転されている。高速鉄道に乗り入れる際も最高速度は250㎞/hを超えないので、G列車とは明確な速度差が出る(一部、高速鉄道乗り入れ時にG列車と同じ速度を出すものもある)。2018年からは、動力集中型動車組CR200Jによる運転される列車もあり、この場合、一部編成の座席車は集団見合い式の方向固定リクライニングシートとなる。運賃は原則として対キロ制の包括運賃である。

城際動車組列車(城際)(列車番号C)

短中距離の電車列車のうち特定路線の隣接都市間で運転されるものが特に城際動車組列車を名乗る場合がある。車両も一部で近郊型が用いられる。三角表運賃を施行しており、具体的な運賃は12306サイトで確認してほしい。

直達特快列車(直達)(列車番号Z)

最高速度160km/h、25T客車。快速料金適用。

特快のバリエーションの一つで、最新鋭の25T客車で編成された列車を明示するために名称・記号を別としたものである。元来は2004年に登場したノンストップ夜行列車を表す種別だったが、その便利さが買われて停車駅が増えていき、ノンストップという特徴が希薄化していた。そのため、2014年に定義が変更され、ノンストップかどうかにかかわらず25Tで編成された列車は原則としてZ列車と称することとなった。25T客車は車齢が低いこともあり、設備は下位種別よりも優れていることが多い。

特快列車(特快)(列車番号T)

最高速度140km/h、25K客車等。快速料金適用。

主要幹線や一部地方路線に設定された優等列車である。数百キロに一つの停車駅で飛ばしていくその速さは下位種別に比べて際立っている。運賃負担軽減政策の下、Z列車もT列車も特快料金を施行しておらず、快速料金を適用しているので、同じ区間にZ,T,K列車が走っていたら、ぜひZ,T列車に乗車したい。

快速列車(快速)(列車番号K)

最高速度~120km/h、25G客車等。快速料金適用。

中国国鉄の客車列車で最も本数の多い種別であるが、その中身は多様であり、典型が存在しない。短距離から長距離まで、あらゆる距離帯を結ぶ列車がK列車として運転されている。また、増収のために、普快列車が大して速くなるわけでもなくK列車に昇格することが続いているため、普快列車より速いとも一概に言えない。

普通旅客快車(普快)(列車番号 アルファベットなし1001~5998)

最高速度~120km/h、25G客車等。普快料金適用。

2000年にスピードアップされ種別が4つ(特快、快速、普快、普慢)に増えたが、普快はそれより前から運転されている速達列車の流れを汲み、中小都市にこまめに停まっていく列車である。こちらもK列車と同じく短距離から長距離までバラエティ豊かだが、近年、快速への格上げが続いており、本数は減少している。日本の急行列車同様の存在と言え、今後もK列車に取り込まれる傾向は続くだろう。

普通旅客慢車(普慢)(列車番号 アルファベットなし6001~7598)

最高速度~120km/h、25B客車等。加快料金不要。

各駅に停車する列車である。中国国鉄は、沿線の短距離輸送は原則として道路交通に移譲しているが、沿線の道路交通が不便な地域を対象に、1日1往復程度の普慢列車を設定し、沿線小駅から中心都市への往来を確保していることがある。鉄道職員の送り込みや小駅の資材運び込み等の任務を担っていることも多い。

旅遊列車(旅遊)(列車番号Y)

特に観光向けに設定された列車が名乗る種別である。快速料金が適用される。

市郊列車(市郊)(列車番号S)

一部路線で運転されている都市近郊列車である。

列車番号・愛称について

一部の列車は国鉄の栄誉称号や企業が手に入れた命名権に基づく商業的愛称がついているが、これらは旅客案内やきっぷの発売では一切用いられない。したがって、あくまで列車番号が旅客営業上のキーとなる。列車番号は走行線路の上り・下りにより偶数・奇数が変わるが、どちらの番号でも同じきっぷを購入することができ、旅客が区別する必要はない。きっぷに記載されるのは券面発駅出発時の列車番号なので、駅ではこれをキーにして発車番線等を判断すればよい。

座席・寝台の紹介 電車列車編

電車列車

高級軟臥(電車)

CRH1E型1061~1072編成で運転される夜行寝台電車列車に連結されている寝台。1室2人で、室内の設備は2段ベッド1組、扉、ソファ、クローゼット。照明は部屋単位で操作できる(軟臥も同じ)。トイレ・洗面台は共同。車端にソファが置かれたリビングスペースがある。きっぷの発売は寝台単位で行われるため、定員未満の乗車では他人と同室になる可能性がある(軟臥も同じ)。

軟臥(電車)

一般的な夜行寝台電車列車に連結されている寝台。1室4人で、室内の設備は2段ベッド2組、扉。トイレ・洗面台は共同。客車よりも小ぶりな高速鉄道の車体に寝台を載せているため、上下スペースが狭く、荷物置き場が少ない。窓も低いため上段からの車窓は無い。寝台の居住性はまだ客車に優位性がある。なお、2018年から、この設備が、より下位の動臥として発売されている事例が見受けられる。12306サイトで調べた場合、同じ列車に二等座とともに出現する「動臥」は、実際には軟臥である(下記の動臥が含まれる車両は二等座を有していないため)。

動臥

動臥

2017年に登場した新しいタイプの寝台。CRH2E型2463~2465編成で運転される夜行寝台電車列車に連結されている。個室をやめ、中央の通路を挟んで、線路方向に2段の寝台を互い違いに配置した。カーテンも設置してプライバシーを確保したうえ、軟臥よりも定員を増やしている。下段と上段のそれぞれに窓を配したので、車窓も保証されており、これが一見すると2階建てに見える本車両の特徴となっている。

商務座

商務座のシートをフラットにしたところ

中国国鉄電車列車のファーストクラスであり、全国のG列車に連結されている。本革張りシートを1-2のゆとりある配列で設置。このシートは電動でリクライニングし、最大でフルフラットになる。身長180センチの人でも楽に横になることができる。商務座はサービスも充実している。専属のパーサーが乗務しており、新聞・スリッパ・毛布の提供がある。座席に内蔵されたディスプレイで音楽や映画を楽しめるほか、タブレット端末が各席に備え付けられている場合もある。飲み物は飲み放題で、朝・昼・晩の食事時間帯に差し掛かる場合は無料で弁当が提供される。なお、局管内のみ運転する短距離のG列車等では座席のみの営業となっている場合がある。最高級座席だけに、運賃は上記の寝台よりもさらに高く、一等座の約2倍。

特等座

特等座として発売される座席には二種類あるが、いずれもメインの座席ではない。

一つは、運転室後ろの空間に、一等座と似たシートを1-2のゆとりある配列で設置した座席。初期に製造された一部の電車列車にしかついておらず、のちの車両は特等座ではなく商務座を設置するようになったので、目にする機会が少ない座席となっている。

いま一つは、2人+2人向かい合わせまたは3人+3人向かい合わせの個室座席。一等包座とも呼ばれる。こちらも一部の初期編成にしかついておらず、目にする機会が少ない。

一等座

一等座

ほとんどの電車列車に連結されている、上級の座席。大きめのシートを2-2配列で設置しており、日本の新幹線のグリーン車とよく似ている。座席は回転リクライニングシート(例外あり)。担当局によっては無料で飲み物の提供がある場合がある。通路にディスプレイがあり、ニュース番組や広告を放映していることが日本と異なる点の一つである(二等座も同様)。運賃は二等座の約1.4~1.6倍。

2019年1月から登場したCR200JによるD列車では、運賃は一般のD 列車よりいくぶん安く、初期型の編成では集団見合いのリクライニングシートとなる。

二等座

二等座

ほとんどの電車列車に連結されている、通常の座席。シートを2-3配列で設置しており、日本の新幹線の普通車とよく似ている。座席は回転リクライニングシート(例外あり)。電車列車で最下位の設備とはいえ、客車列車の硬座に比べれば、座席のクッションが効いており、リクライニングし、足が伸ばせるため、居住性は格段に良い。運賃は同じ距離を走る客車列車の軟臥より少し高い水準。

CRH6グループによる近距離のC,D列車では、集団見合いのクロスシートとなる。また、2019年1月から登場したCR200JによるD列車では、運賃は一般のD列車よりいくぶん安く、初期型の編成では集団見合いのリクライニングシートとなる。

代座運用

夜行寝台電車列車の車両を昼間に間合い運用することがあり、この時に、軟臥の下段に3人座らせるようにし、二等座として発売することがある。この場合、12306サイトでは確認画面が表示されるし、券面にも「軟臥代二等座」と記載されるのでそれとわかる。

共通設備

電車列車車内にはトイレ・洗面台のほかに荷物置き場・給湯器がついている。ほとんどの車両には各座席に電源もついている。エチケット袋が各座席に配布される。

座席・寝台の紹介 客車列車編

客車列車

料金は運賃・料金表を参照していただきたい。なお、「軟」が含まれる等級を軟席と総称し、「硬」が含まれる等級を硬席と総称する。

高級軟臥

高級軟臥(新空調)

一部の列車に連結されている高級な寝台である。1室2人で、室内の設備は2段ベッド1組、扉、ソファ、クローゼット、セキュリティボックス、トイレ、洗面台。これらの他、本項以下軟臥まで、ハンガー、ポットが備わり、車内放送と照明は部屋単位で操作でき、また、列車により衣類ブラシ、靴磨き用クロス、スリッパが提供される。きっぷの発売は寝台単位で行われるため、定員未満の乗車では他人と同室になる可能性がある(軟臥も同じ)。

一人軟包

一人軟包(三人)(新空調) (Chaff氏提供)

一人軟包は、麗江~昆明の一部列車に連結された家族向けの寝台である。1室3人で、室内の設備はセミダブルベッド1つとシングルベッド1つが上下に組み合わされており、扉が閉まる。夫婦と子供1人の家族がまとまって乗車するのにうってつけの設備となっており、1枚のきっぷで3人が乗車できる。

軟臥

軟臥(新空調)

ほとんどの長距離列車に連結されている上級の寝台。1室4人で、室内の設備は2段ベッド2組、扉である。車端には硬臥車にはない洋式トイレが設置されている。硬臥よりもベッドが分厚くてやわらかく、幅も75センチと広い。下段と上段の間の高さは95センチ、上段と天井の間の高さは80センチ、ベッドの長さは190センチ。2階建て客車では、2階の個室は1段ベッド2組の2人個室となる。

包厢硬臥

国際列車の硬臥は、軟臥と同じ1室4人の構成の個室に、硬臥の薄いベッドを設置したものとなる。これを特に包厢硬臥(包厢は個室の意味)という。国際列車用の車両を格下げして国内で運用している列車にも連結されている場合がある。

硬臥

硬臥(普通)

ほとんどの長距離列車に連結されている通常の寝台。開放型とセミコンパートメントタイプがあり(営業上は区別されない)、いずれも1区画6人で、3段ベッド2組である。扉は無い。ベッドの寸法は幅60センチに長さ180センチ、下段と中段の間の高さは95センチ、同じく中段と上段は75センチ、同じく上段と天井は55センチである。上段は狭くて車窓が見えないが物音が入りにくいので寝るにはよい。中段は出入りしやすいし車窓もあるので多くの人に好まれる。下段は最も出入りしやすいが、昼間は上段・中段の人が座る場所ともなるので、好きな時に寝られるとは限らない。料金は上中下で差異があり、順に高くなる。通路にも座席とテーブルがあり、車窓を眺めたり食事を摂ったりする場所として重宝する。

硬臥は、廉価だが必要な快適さを備えた設備として人気が高い。軟臥の個室に無い開放感を求めて、わざわざ硬臥を選ぶ人も少なくない。

硬臥は、長距離列車だけでなく、昼行の短中距離列車にも連結されることがある。これは、硬座に対する優等設備として軟座ではなく硬臥を連結したもので、昼寝しながら移動する選択肢を与えてくれるものである。

軟座

軟座(普通)

昼行の短中距離列車の一部に連結されている上級の座席。固定クロスシートを2-2配列により隣同士向かい合わせで設置している。硬座よりもシート幅やシートピッチが広いとはいえ、電車列車の二等座に比べると居住性はかなり落ちる。特に乗客が少ない時になると、硬座は3人掛けシートで横になったり、向かいの座席に足を投げ出したりすることができるが、軟座はそれらができないので、硬座よりも居住性が悪い場面すらある。日本の普通列車グリーン車に似て、軟座車はビジネス利用が見込める区間にしか連結されないが、そうした区間はほとんどがもはや電車列車に移行したため、軟座車が連結された列車は極めて少ない。リクライニングシートを装備することもある特等軟座車や一等軟座車・二等軟座車も存在するが、同様に運用は極めて少ない。

硬座

硬座(普通)

硬座(新空調) (はまとく氏提供)

ほとんどの列車に連結されている通常の座席。固定クロスシートを2-3配列により隣同士向かい合わせで設置している。普通硬座と新空調硬座で設備が大きく違い、新空調硬座の方がシートピッチが広く、背ずりが傾斜しており、座面も柔らかいため、普通硬座よりも居住性はかなり良い。輸送力確保のため夜行列車にも積極的に連結されるが、この座席で夜を越すのは負担が大きい。また、立ち席客が乗るのも硬座車であり、満員になるとトイレに行くのも一苦労になるなど、混雑すると居住性が著しく落ちる。

代座運用

車両運用の都合で寝台車を座席車として使用することがある。軟臥の下段に3人座らせるものは軟臥代軟座として発売し、硬臥の下段に4人座らせるものは硬臥代硬座として発売する。この場合、12306サイトでは確認画面が表示されるし、券面にも「軟臥代軟座」ないし「硬臥代硬座」と記載されるのでそれとわかる。

新空調客車と普通客車の違い

客車列車には、新空調と普通の違いがある。

新空調客車は、「集中電源方式で空調サービスが提供される客車」と定義されており、すべての運賃・料金が5割増しになる。新空調客車では、冷房と強制通風の設備があり、暖房は電気暖房である。今日ではほとんどの列車は新空調となっている。

普通客車は、冷房と強制通風の設備が無く、夏は窓とベンチレータによる自然通風と扇風機に頼るものである。暖房は各車両に設置された石炭ボイラーによる温水暖房である。年々淘汰されてきており、全国的にも残りわずかとなっている。

きっぷの買い方と旅行計画

中国国鉄ではきっぷは基本的に電子化されており、紙のきっぷではなくきっぷの購入情報が存在するのみである。しかし、本章では便宜のためきっぷの購入情報を指して「きっぷ」と称することとする。

事前知識

きっぷは買いにくい?

近年、新線が大量に開業し、列車本数が大幅に増えたことから、需給ギャップは急速に解消しており、繁忙期を除けば、多くの区間は比較的容易にきっぷを入手することができる。中国の鉄道きっぷは入手しにくいという長年の「常識」もあるが、いまは残席が全世界に向けて公開されているので、まずは12306サイトを開いて実際の混み具合を確かめてほしい。

きっぷは原則全席指定

中国国鉄は原則として全席指定である。満席の際は、無座と呼ばれる立ち席券を、数を限って発売するが、これも乗車列車は指定される。

乗車列車を指定して発売するので、きっぷは、システムが必要な料金を自動的に取りまとめて1枚で発券される。日本で乗車券と特急券を別々に買うのに比べると、この点では、係員と旅客の双方にわかりやすいといえる。

転売防止のため実名制

輸送力が長年不足していた中国国鉄ではきっぷの転売が横行しており、これを根本から防止するために、2012年から全国的にきっぷが実名制となった。購入時にあらかじめ身分証明書類の情報を入力・印字し、乗車時には旅客・きっぷ・身分証明書類の三者が一致していることが駅入り口でチェックされるというものである。入力・印字する情報が誤っていると乗車できなくなってしまうので、入力内容はよく確認したい。

発券システムはオンライン化されている

発券システムはオンライン化が完了しており、任意の発駅・列車のきっぷをどこでも買うことができる。

きっぷが買いにくい多客期

春節(旧正月)の前15日間と後25日間、夏休み学生の帰校ラッシュ(8月下旬)、国慶節休暇(10月1日)から1週間はきっぷを買いにくい多客期となる。このほか2、3連休として、清明節、メーデー、端午節、中秋節があり、近場の観光地を結ぶ区間を中心に混雑する。

座席・寝台の発売開始の仕方

乗車駅発車14日前から発売が始まり、発売開始時刻は乗車駅によって異なる(次のページで各駅の発売開始時刻が検索できる。https://www.12306.cn/index/view/infos/sale_time.html)。長距離列車の短距離利用によるロスを防ぐために、短距離のきっぷは乗車日が近づいてから放出される場合がある。あらかじめ12306サイトで乗車日を変えて検索し、発売開始のトレンドを把握しておくとよい。

きっぷの買い方

まず、日本にいる間に、乗車予定区間の混み具合を12306サイトで調べておきたい。もしも、そこまで混み合っていないなら、中国入国後に駅等の窓口で買うのがシンプルである。逆に、到着後の購入では席が無さそうであれば、オンライン予約を試すことになる。

窓口で購入する

きっぷを買う窓口には、駅窓口と街頭窓口とがある。本時刻表の路線図に載っている駅は、旅客乗降所・信号場を除けば、すべてきっぷ売り場が設置されている。これら窓口はオンライン化されており、全国の任意の駅を発駅とするきっぷが買える。なお、これまでは他都市発のきっぷの購入には1枚5元の手数料を要したが、2017年からこの手数料は廃止されており、他都市発のきっぷの購入は当地発のそれとなんら区別が無くなった。

中国語が話せなくても、乗車日・発駅・着駅・希望列車の列車番号・座席・寝台の種類・枚数を記したメモを渡せばよい。本時刻表の巻末にきっぷ購入メモを収録しているので活用していただきたい。もちろん、「一番早い石家荘行きの列車、硬座1枚」といったように、具体的な乗車列車の希望を出さずに購入することもできる。身分証明書番号の入力があるので、パスポートの呈示も忘れずに。

支払いは現金が使える。機器設置窓口においては、銀聯カードやアリペイ(支付宝)、WeChatペイ(微信支付)での支払いもできるが、海外クレジットカードでの支払いはできない。

12306サイトには街頭窓口の一覧が掲載されているので活用していただきたい。中国語で検索する時のキーワードは「火车票代售处」である。

<街頭窓口一覧表>

中国铁路12306网站

自動券売機で購入する

自動券売機は残念ながら身分証明書類として二代居民身分証しか使えず、外国人は購入手続きに進めない。ただし、空席検索端末としてはおおいに使えるので、窓口に並ぶ前に活用したい。一部大駅ではパスポートを読み込める自動券売機も導入され始めており、これは外国人でもきっぷを購入することができる。

インターネットで購入する

12306サイトを利用することで、日本からでもきっぷが購入可能である。12306.cnからメールアドレスとパスポート情報でアカウントが作成でき、クレジットカードで決済が可能である。

後述するように、ほとんどの区間においてきっぷの受け取りは必要なく、購入時に使用したパスポートを呈示することで直接乗車できる。

満席の場合の豆知識

満席の列車でも、短距離だと空席がある場合がある。この場合、短距離できっぷを買っておき、車内で乗り越し精算することで目的地へ向かうことが可能である。乗り越し区間は立ち席となる。

マイナーな地点間を結ぶ列車は空いていることが多いので、別の列車と組み合わせて利用すると繁忙期でも移動できることが多い。

立ち席券(無座)しか手に入らなかった場合でも、必ず席が無いわけではない。列車によっては駅への割り当てなど様々な背景で実際には席を売り切っていないこともあるし、同じ理由で寝台が余っており、車内で格上げできる場合もある。いずれも列車によるし、早い者勝ちなので安易な期待は禁物である。

乗り換えについて

中国では多種多様な経路・区間の列車が走っているとはいえ、行先や時間によっては乗り換えを要する行程を組むこともあるだろう。

乗り換えでお勧めしたい方法は、乗る予定のすべての列車のきっぷを乗換駅で区切って、あらかじめ買っておくものである。2017年10月から、それまで他地域発のきっぷを買ったり引き換えたりする場合に収受していた5元の手数料が必要なくなったので、全行程のきっぷをあらかじめ確保しておくことを妨げる要因が一切なくなった。

中国国鉄では2016年から乗り換えを駅の業務として改めて位置付けたので、主要駅では、次の乗車列車のきっぷを所持している場合に、駅を出ずに待合室に入れてくれる運用が行われている。「快捷換乘」の表示に従ってすすむか、きっぷの購入画面を見せて係員に尋ねたい。

乗り換えに必要な時間は一般に15分は見ておきたい。

列車の遅れ

乗り換えを考える際などに気になるのが列車の遅れだが、電車列車については平常時はあまり遅れることは無い。客車列車もかなり正確に運転は行われているが、時折遅延が発生するので、代替の効かない乗り換えや帰国のフライトへの接続は余裕を持ちたい。

列車の遅れによる不接続

列車遅延により乗り換えができなくなった場合は、以降のきっぷについて、無手数料で払いもどしてくれる。

旅客営業の主なきまり

いずれも詳しくは中国国鉄の営業案内を見ていただきたい。

きっぷの変更

発車までに1回だけ指定変更が可能である。発車48時間前までなら着駅も変更できる。

きっぷの払い戻し

発車までに払い戻すことができる。

途中駅からの乗車

券面の途中駅から指定列車に乗車することは可能である。未乗区間は払いもどされない。

途中下車

下車前途無効である。単に途中駅で下車・出場することは可能だが、きっぷの残りの区間は無効となるということである。

乗り越し

最遠で乗車中の列車の終点駅までに限って乗り越しが可能である。区間運賃・料金の収受となり、寝台では起算キロの関係でかなり高くなるので注意されたい(乗り越し区間は硬座にしてもらうのが良い)。

座席・寝台の変更

乗車後でも、空席がある場合に差額を支払うことで上級の座席・寝台に変更できる。乗車列車の列車長に申し出る。下級に変更することも規則上は可能だが、差額は払い戻されない。

乗り遅れた場合

乗り遅れた場合でも同じ区間を走る当日中の後続列車に空席がある場合に変更することができる。長距離列車では後続列車が存在しないこともあるし、すでに変更したきっぷはこの取り扱いの対象外となるため、やはり乗り遅れないに越したことはない。

 

手荷物

本時刻表で駅名左側の営業列が無印の駅では、手荷物を取り扱っている。

 

乗車手続き

駅に向かう

同じ都市にターミナル駅が複数ある場合は、別の駅に間違えていかないように気を付ける。また、国鉄の駅名と市内交通の駅名が異なっていることが多いため、これも注意が必要だ。道路交通で向かう場合は渋滞に備えて十分にゆとりをもって行動したい。

きっぷを受け取らずに乗車可能

2020年から、すべての列車において、きっぷの電子化が行われ、紙のきっぷを受け取らずに、きっぷ購入時に登録した身分証明書類(外国人はパスポート)の呈示で乗車できるようになった。

これまで、自動券売機の大半がパスポートに対応していなかったために、外国人が中国できっぷを受け取るには有人窓口に並ぶ必要があった。きっぷ受け取りにかかる時間が読めず、乗車リードタイムを大きく引き伸ばしていた。きっぷの電子化により、あらかじめきっぷをオンラインで購入した場合は、きっぷの受け取りが必要なくなった。このため、乗車手順は本人確認・荷物検査・改札だけとなり、駅が空いていれば数分で入口から改札口までたどり着けるようになるだろう(駅にはゆとりをもってお越しいただきたい)。

駅できっぷを買う場合

あらかじめオンラインできっぷを購入していない場合は、駅の「售票处」(出札口)の窓口に行き、きっぷを購入する。紙のきっぷは発行されず、購入情報がシステムに記録される。乗車時は身分証明書類(外国人はパスポート)を使用する。また、きっぷの代わりに、購入控えを受け取ることができる。オンラインで購入した場合と違って他に購入情報を確認するものが無いので、その場でもらえる購入控えを携帯することを推奨する。

購入控え。きっぷと同様に日付・列車番号・区間・座席等が記載してあるが、きっぷとしての効力はない

きっぷ売り場は、近年急速にインターネット予約と自動券売機の利用が普及したため行列は解消しつつある。

なお、大駅では発車十数分前(駅によって決まっており窓口等に公示されている)に当該列車の出札を終了するので気を付けたい。

連絡先登録

きっぷ購入時に一人ずつ電話番号を登録することが求められている。オンライン購入の場合はアカウント情報に登録していればよい。子ども・高齢者・外国人などで中国の携帯電話番号を持っていない場合は、知人の携帯電話番号や自分のメールアドレスでよい。

荷物一時預かり

大駅では駅前広場の売店等で荷物の一時預かり[寄存]を行っており、乗車まで時間がある場合に活用できる。閉店時間をよく確認しておきたい。

駅舎に入る

中国では駅舎に入る際にきっぷの購入情報・身分証明書類の確認と安全検査が行われる。

駅入り口では有人通路を通る

「进站口」から駅舎に入る。このとき、有人通路の係員にパスポートを呈示して確認を受ける。このとき、パスポートをシステムに読み込ませて乗車情報を中央サーバーから呼び出すのが本則だが、まれに読み込みがうまくいかない場合があり、この場合はスマホに表示した購入情報または購入控えを呈示して確認してもらうのが良い。これが済むと改札までパスポートは必要なくなるので、一旦立ち止まって、大切にしまっておきたい。

駅入り口のセキュリティチェック

次に安全検査を受ける。すべての荷物をX線検査装置に通し、同時に係員によるボディチェックを受ける。安全検査と言っても、空の便とはレベルや目的が大きく異なるので、通過速度はかなり速い。金属を体から外す必要はないし、液体やノートパソコンを荷物に入れたままにしていても問題ない。なお、政治的に重要な時期・行先・地域になると、にわかに検査が厳しくなり、飲料の試飲などが求められることもある。また、北京行き列車などでは、乗車前に再度検査が行われることがある(二次安検)。

待合室

安全検査を出てきたところにある電光掲示板を見て、乗車列車の待合・改札地点を把握し、そこに向かう。

大駅では駅舎内で売店やファーストフード店・レストランが営業している。

一部の大駅では商務座や軟席利用者のための専用待合スペースを用意しており、優先改札を行っている。

赤帽

一部の大駅では赤帽サービスがあり、列車まで荷物を運んでくれるほか、優先改札もセットとなっていることが多い。

改札

改札は列車別に行われる。おおむね発車15分前から始まることが多い。改札は発車3~5分前(駅によって決まっており待合室に公示されている)に打ち切られるので、ゆとりをもって通過したい。

有人改札でパスポートの写真付きページを読み取る機械

改札口では、国鉄の公式情報によれば、ICチップ入りパスポートは自動改札機にタッチすることで通過可能である。しかし、実際には何らかの理由で通過できない場合もあるようなので、この場合は有人改札に回る。また、ICチップの入っていないパスポートも有人改札に回る。有人改札では、パスポートをシステムに読み込ませて乗車情報を中央サーバーから呼び出すのが本則だが、まれに読み込みがうまくいかない場合があり、この場合はスマホに表示した購入情報または購入控えを呈示して確認してもらうのが良い。

これらの箇所で、結局はスマホで表示できる購入情報(12306アプリ、WeChatに来た12306からの購入通知、Trip.comアプリ等)または購入控えが必要になる場合があるので、駅窓口できっぷ(Eチケット)を購入した場合は購入控えを受け取って携帯しておいた方がよい。

改札を通過して、ホームから列車に乗る際は、自分の号車・座席番号を把握する必要がある。このとき、手元に紙のきっぷは無いので、スマホに表示した購入情報または購入控えで確認することとなる。

車内で検札が行われる場合は、パスポートを呈示すればよい。係員が、きっぷ購入情報があることを携帯端末で確認する。

駅を出るときも、改札口と同様である。

領収書も電子化された

以前はきっぷの形をした紙の領収書を受け取ることができ、乗車記念として旅行者には重宝されてきた。しかし、2025年10月1日から、領収書は電子データに一本化され、きっぷの形をした紙の領収書は受け取れなくなった。電子領収書[报销凭证]は12306サイト・アプリで受け取る。

車内での過ごし方

荷物置き場

電車列車では、棚や車端の荷物置き場を使える。

客車列車では、棚や座席の下、寝台の下を使える。軟臥やセミコンパートメント仕様の硬臥は、通路の天井裏が大きな荷物スペースになっており、室内から荷物を上げ下ろしする。

車内販売

ローカル列車も含めてほとんどの列車に車内販売が乗車している。列車によるが、主なメニューは次の通り。ビール、白酒、ジュース、水、ヒマワリの種、スナック菓子、おつまみ(ソーセージ、肉の干物、うずら卵、干し豆腐等)、カップラーメン、たばこ、ティッシュ、トランプ。

電車列車では上記に加えてコーヒーの販売があることも多い。逆に、電車列車は車内禁煙のため、たばこの販売は無い。

長距離列車では、充電済みのモバイルバッテリーやアメニティグッズ、スリッパ、雑誌などの販売が加わることがある。

その他、列車により、増収策の一環で雑貨の販売がある場合がある。

弁当の販売

電車列車の出前で頼んだ弁当

電車列車ではレトルト弁当の販売を行っている。食事時間帯になると係員が注文を取りに回るので、この時に注文すると、ビュッフェ車で加熱した弁当を座席まで届けてくれる。価格帯は15元~80元まで幅広い。

このほか、電車列車では、12306サイト/アプリを用いて出前を頼むサービスがある。取り扱い駅発車1時間前までにオンラインでメニューを見ながら注文すると、駅の飲食店で調理された出来立ての食事が座席まで出前されるというものである。12306サイト/アプリは中国の携帯電話番号が無ければ使えないが、もしアカウントを持っていたらぜひ活用したいサービスだ。

客車列車では、食堂車を連結した列車の多くで、食堂車で調理した出来立ての弁当が販売される。価格帯は15~30元。

食堂車

電車列車のビュッフェカー

電車列車の多くはビュッフェカーを連結しており、レンジ調理の簡単な食事を提供している。

食堂車

客車列車のうち夜間走行する長距離列車の多くには食堂車が連結されており、その場で調理した出来たての食事を提供している。一部の列車はレンジ調理の食事となっている。プレートに盛り付けた定食のこともあれば、料理単品注文のこともある。価格帯は市中の大衆食堂の2~3倍で、料理一皿が30~50元、定食が50元程度となる。食堂車の営業時間は比較的短いので、利用前に係員に確認しておきたい。

鉄路12306アプリで、各列車の食堂車の有無とメニューを事前に確かめることができる。鉄路12306アプリの食事デリバリー検索画面([餐饮・特产])を開き、乗車日と列車番号を入力し、さらに乗車駅(単に調べたい場合は始発駅)を選択すると、その列車・乗車区間で利用可能な食事デリバリーの供給店舗が表示される。その中に「○○客運段[客运段]」(他の組織名の場合あり)や「列車自営[列车自营]」とある場合、それは当該列車の食堂車を指している。アプリ画面でさらにタップすると、食堂車のメニューが表示される(注文も可能)(デリバリー可能なメニューのみ表示されている場合がある)。

食事時間帯以外の食堂車では、実態としては立ち席客への座席の販売なのだが、喫茶営業をしていることもある。

途中停車駅と駅ホーム販売

電車列車では、停車時間が短いため下車客以外はホームに降りないよう呼びかけられている。客車列車では、十分な停車時間がある場合にホームに降りて散歩することができる。発車時刻より前に乗降扱いが早じまいしてしまうこともあるので、この時は最寄りの号車に乗車する。

ホームの移動販売車

ホームでの弁当と惣菜の販売

大駅ではホームに売店や移動販売車があり、車内販売と同じような物品や出来立ての弁当、当地の名物を売っていることがある。短い停車時間の中で買い物をすることになるので、慌てないようにしたい。

給湯

中国人は熱い茶を好むため、すべての列車に給湯設備がついており、無料でお湯を使うことができる。カップラーメンを調理できるほか、蓋つきのコップと茶葉を用意しておくと手軽にお茶が飲める。

普通客車では石炭ボイラーで湯を沸かしているため、湯が沸いた都度の供給となっている場合がある。湯の供給場所とタイミングは係員によく尋ねたい。

トイレ・洗面台

洋式トイレは電車列車の各編成と客車列車のうち軟席車両と身体障害者用トイレに設置されている。それ以外は和式となる。電車列車には必ずトイレットペーパーが備え付けられているが、客車列車は列車によるのでトイレットペーパーを携帯しておきたい。客車列車の一部はトイレが垂れ流し式であり、駅停車中とその前後は締め切りになるので注意されたい。

客車列車の洗面台

洗面台がほとんどの電車列車とすべての客車列車についている。グレードの低い客車列車だと手洗い石鹸が備え付けられていないことがあるので、気になる方は石鹸を用意されたい。

寝台車

寝台車では列車員が情報端末で個々の旅客の着駅を把握しており、夜中でも起こしに来てくれる。深夜早朝の到着でもぐっすり眠ってよい。到着の約30分前までに起こしに来てくれる。

寝具はすでにセットされている。下段の枕と掛け布団が上の段に置いてある場合もある。寝台を覆うカーテンは無い(動臥を除く)。

上段・中段の人は、昼間は下段や通路の補助席に座って過ごすことができる。

硬臥車では22時ごろに全車消灯となる。

多くの列車では座席車と寝台車の間は施錠された扉や食堂車で区切られている。施錠された扉は列車員を呼べば開けてもらえる。寝台車から座席車への通り抜けはできるが、逆は寝台車のきっぷの購入記録の呈示が必要である。

電源

電車列車は、多くの型式の車両において旅客が気軽に使える電源(220V/50Hz、以下同じ)が設置されている。

客車列車では、新空調客車列車のほとんどの軟臥車の個室に電源が、多くの硬臥車の通路に少数の電源が、それぞれ設置されている。新空調硬座車では一部の設置にとどまり、普通客車では席種にかかわらずほとんど設置されていない。

着替え

夜行列車で2泊以上することもあるが、着替えるための空間は用意されていない。ただし、客車列車の軟臥車の洗面台は閉め切れるようになっており、ここを使うこともできる。

車内禁煙

電車列車では車内に喫煙できる場所は無く、全車禁煙である。客車列車も全席禁煙だが、デッキに限り喫煙が認められている。

乗務員

電車列車では列車長と2人(16両編成では4人)前後の列車員が乗務している。このほかに列車により鉄道警察官、車内販売やビュッフェの係員、清掃係員が若干名乗務している。

客車列車では列車長と各車両1名の列車員が乗務しており、長距離列車ではその交代要員も乗車している(編成端部の硬臥車が泊まり込みスペースとなっている)。各車両1名の列車員は、扉の開け閉めや車内清掃等を担当する。列車長は、硬座車のうち1両に設けられた列車長辦公席や食堂車にいることが多い。このほかに列車により鉄道警察官、車内販売の係員が若干名乗務している。

安全

中国の列車内は特段の危険はないといってよい。日本にいる間にも行うべき一般的な防犯策をとるべきである。例えば、カメラを含む貴重品を放置したまま席を離れないようにしたい。寝台車で就寝時は、貴重品は身に着けたり枕の下に敷いたりしておきたい。

万一困ったことがあれば、列車員に連絡をとる。ほとんどの列車には鉄道警察官(乗警)が乗り込んでおり、必要な対応をしてくれる。

検札

座席車では時おり検札が行われるのできっぷの情報が記録されている身分証明書類を呈示する。

写真撮影

車窓を撮る分には特に問題ない。車内でほかの旅客や係員が写り込む場合には、人に無断でカメラを向けた際に起こりうる一般的トラブルに留意されたい。

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